スタッフの目視による曖昧なデータではなく、 客観的なデータに基づく情報を「よさこい祭り」の運営に活用するために
導入前の課題について
岡林様:
実は2年前まで「よさこい祭り」の来場者数の集計は、日本観光振興協会のガイドラインに基づき、数名のスタッフが目視で行っていたんです。一定の面積内にどれだけの人がいるかを目視で確認し、
それを総面積で換算して全体の来場数を割り出すというものでした。
そのため正確な数字ではなく、推測と言いますか「おそらく、これぐらいの人数であろう」という曖昧なものだったのです。しかも、「よさこい祭り」は市内の17会場、距離にすると約6kmの範囲内で行われますので、それぞれの会場の面積を割り出して換算する作業は非常に大変なのです。
ただ、商工会議所では一定期間ごとに「よさこい祭り」の経済波及効果をまとめている関係上、そのベースとなる来場者数はある程度の精度で割り出したい思いがありました。
また、数年前に韓国で発生したソウル梨泰院雑踏事故は、われわれにとっても大きな衝撃を与えるものだったので、開催期間中の事故を未然に防ぐためにも混雑箇所を把握する必要性にも迫られていました。
導入の経緯について
岡林様:
先の課題に加えて、人件費が年々上がっていく中で警備費も結構なコストの割合になっていました。なので、警備費にかかるコストが上がり過ぎないよう、警備員の人数と配置場所を検討する必要がありましたし、地元の警察にもすごくご協力いただいているので、混雑が発生する場所や時間帯の情報を共有できるようにしたい思いもありました。
そこで、2022年からデータとして人流調査が行えるサービスを探し始め、数社に問い合わせてみたのですが、どうにも条件が合わなかったんです。あきらめかけていたのですが、2023年になってからKDDIの高知支店にご相談させていただいたところ、KLAをご紹介いただいたんです。
まさに「これだ!」と導入を決めました。
採用の決め手について
岡林様:
他社のサービスは、そもそも私たちが求めているデータを得られないものであったり、価格や契約期間に関してもマッチしませんでした。しかし、KLAは時間単位で特定箇所の人流や属性を調査できるうえに、契約期間が1ヶ月単位でした。
「よさこい祭り」の開催に合わせて利用したかったので、とても都合が良かったんです。
さらに、費用も予算内で収まる金額でしたし、人的リソースをかけずに調査できる点も魅力的でした。
正直な話、毎年限られた人数で「よさこい祭り」を主催させていただいているので、マンパワーを割く余力がないのが実情なのです。
もし、KLAの活用に4人も5人も人手が必要だったなら契約をあきらめていたと思います。
17会場の人流データを取って総来場者を把握、混雑箇所のリアルデータをもとに翌年の計画を立案
「よさこい祭り」の期間中、どのように活用されたのでしょうか?
岡林様:
まず、2023年に開催された第71回から活用させていただいたのですが、17会場をエリア指定し、どこで、どれだけの人流があるか。また、どこが混雑しているのかを分析しました。そもそも、その分析が目的でKLAを導入しましたので。
最終的に、祭り期間中の総来場者数の測定に活用させていただきました。
その中で、年代層や性別といった属性の情報も取れましたので、そういった情報を商工業者の方々に共有することができました。
導入の成果は?
岡林様:
以前は、スタッフの目視による調査で来場者数を割り出していましたので、お恥ずかしい話「去年より多いね、少ないね」といった推測、肌感覚によるものだったんです。ところが、KLAを導入したことで客観的なデータが取れましたので、より実数に近い来場者数を把握できたと考えています。
また、目視による調査は各会場を「点」で観測するものでしたが、KLAを使うことで「面」で見ることができたことも大きかったですね。「点」で見ていた時とは全然違う数字が出て驚いたりもしたのですが、これが正しい結果なのだなと思いました。
さらに、2023年の調査から、人が混雑する場所や時間のデータが取れましたので、2024年の開催時には、その場所に警備員を増員して対応しました。それもあって今年は混雑に関するクレームが一切ありませんでしたし、懸念していたような事故も起きることなく閉会を迎えることができました。前年度のデータから先手を打って対応したことが功を奏したのだと考えています。その一方、去年の調査では混雑が見られなかったのに、今年は混雑していた場所があったんですね。なぜだろうと調査してみたところ、その場所に出展していた店に多くの人が集まっていたことがわかりました。事前に混雑の理由がわかれば、次の年の対応策を練ることができるので、原因究明のツールとしてもKLAは活用できると実感しました。
「よさこい祭り」は4日間にわたって開催されるのですが、KLAを使うことで日別の人数の比較ができることも便利だなと感じました。昨年は8月9日〜12日の開催だったのですが、9日、10日は例年とほぼ変わらない人出だったんです。ところが、11日、12日は明らかに人出が減っていることが数字で示されました。もし、目視による肌感覚で調べていたなら9日、10日の人出が例年と変わらなかったので「去年と同じぐらいだね」で終わってしまうと思うのですが、今後、「よさこい祭新興会」として私たちが、さまざまな戦略を立てていくうえで、こういった客観的な数字をもとに分析していくことができればミスリードを防げると思うんですよ。改めて、客観的な数字は重要だなと感じています。
それに加え、KLAを活用することで人流、属性の情報を取ることができましたので、それをベースに経済波及効果を調査できたのは大きな成果だと思います。
【今後の活用について】
岡林様:
私たちが求めていた数字はしっかり取れていますので、KLAを導入したことに関して100%満足しています。KLAの機能が10あるとしたら、今私たちが使っているのは、おそらく1か2レベルだと思うんです。別の分析にも活用できるはずなので、長期的な契約を結んで使い込んでいくのがベストであると感じています。
「よさこい祭り」に関して言いますと、開催が8月なので今後は熱中症対策を検討しなければいけないと思っています。例えば、クーリングエリアとしてどこかの施設を指定する際に、その施設が祭り当日にどれだけ混雑しているのかが検討材料になると思うんです。過去のデータを分析しながら調査を進め、その結果を各方面にフィードバックできたなら、すごく効率的ですよね。そういった分析にも活用していきたいと考えています。
また、「よさこい祭り」の同日に花火大会が開催されるのですが、その終了後「よさこい祭り」の会場に大勢の人が移動するんですね。その人流分析はできていませんので、どこが混雑するのかを把握するために、来年の開催時には併せてデータを取りたいと考えています。
ちなみに、「よさこい祭り」で演舞を披露している人の8割近くが女性で、20代、30代が中心なんです。それもあって来場者も同じぐらいの年齢層の女性が非常に多いこともKLAの調査からわかりました。そのデータを加工して商工業者の方々にご提供できれば、地域経済の底上げに寄与できるのではないかと思っています。
商工会議所は事業者のご支援をさせていただいていますので、これはあくまで想定ですが、店舗を建てたり借りたりする際に、その立地の人通りや通行人の属性を調べて提供できれば検討材料になるでしょうし、競合店調査のようなかたちでも使えるのではないかと考えています。
(取材月 2024年9月)